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医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
小松 秀樹
朝日新聞社 刊
発売日 2006-05


出版社 / 著者からの内容紹介
日本の医療は、今、崩壊の危機にさらされている。現職の虎の門病院泌尿器科部長がついに声を上げた。医療の最前線に立つ大病院の現場で起きる「医師の立ち去り」の実態と理由と、その対策について、具体的に報告し、提言する。医療現場で日々、診断、治療、手術などの日常業務を行いながらも、「発言する医者」として、日本医療を崩壊から守るために務める著者の熱い思いが伝わってくる。


 当事者的立場の者の書く文章は、どうしても自分たちの立場を庇護するものになりがちだが、本書は客観的に、このままだと手術のような成功と危険が隣り合わせの医療行為を行なう事は、医師が訴訟の被告になる可能性が高まる事とイコールであり、それを避けて勤務医が通院外来のみ診療する開業医となる例が増え、それが益々医療従事者の人手不足を進ませ、基礎研究による業績偏重主義による臨床技術の低下もあいまって、早晩イギリスのように年度末になると予算不足で休院したり、エコー検査を2年も待たせるようになるか、米のように医療をも市場原理にゆだねて金持ちだけが医療を受けられるようになるのではないかと危惧し、全ての人が安価で安心して受診できるようなシステム作りを政治・厚生省・裁判・医局・報道機関・国民それぞれに対し具体的に提案をしている。
 特に医療事故が発生した場合の解決法として、スウェーデンの無過失補償制度を、それ以前の防止策として手前味噌ではあるが自身の勤務する病院の入院診療指針を紹介し、前者が機能する土台として、死生観を主とする社会思想の熟成を、国民とそれをリードする報道機関に求めている。
 小児科を新卒医が選ばなくなっているとの程度は知っていたが、患者として期待される結果とならなかった医療に対し、損害賠償請求することが合成の誤謬となって、自らが望む医療を現体制で受けられなくなる形で戻ってきつつある現在、断片的な知識だけでなく、本書で全体的に医療問題を考え、国民皆健康保険制度をどう効果的に存続させるかを、早急に考えねばならぬ時期に来ているのだ。

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